2011. 11.17
HMYC チャイナカップチャレンジ2010
レポート:石丸寿美子
葉山マリーナヨットクラブ(HMYC)は、JSAFからの推薦を受け、2010年10月29日~11月2日までの4日間「ChinaCup International Regatta 2010」に日本代表チームとして参加しました。チャイナカップは香港と深センをベースにおこなわれる国際レースで、HMYCがエントリーしたのはその中のワンデザインクラスです。
今回HMYCでは、初めて海外レースに選手団を派遣するということで、「HMYC チャイナカップ・チャレンジ 2010」 として、選手をクラブメンバーから広く公募し、計10チームからバラエティーに富んだ顔ぶれでの遠征となりました。
後半のメンバーです。前列中央が古田スキッパー。photo by CCIR
ワンデザインクラスは、大会側から30艇のBeneteau First 40.7が用意され、南アフリカ、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カザフスタン、ウズベキスタン、ロシア、フランス、トルコ、イスラエル、エストニア、日本、タイ、シンガポール、そして地元の香港や中国など30チームがエントリーしました。とは言え、周りを見回すと乗員はどこも体格の良い欧米人が中心で、標準的アジア人体型で女性クルーも混ざっているTeam HMYCはちょっとだけ緊張(気後れ?)しながらの参戦となりました。
レースは、当初、香港をスタートし、深センまで約30マイルのパッセージ・レースで幕を開け、深センで上下インショア5レース、ショートディスタンス2レースの全8レースが予定されていましたが、スタート前日になって、香港でのレースの許可が下りなかったとの理由で突然初日のパッセージ・レースがキャンセルになってしまいました。結局この日は、ビクトリア・ハーバーから中国のボーダーを越えて深センまで、練習がてらのクルージングとなりました。
深センが近づくと、最近日本ではあまり見かけなくなったアドバルーンが遠くからたくさん見えます。深センでのベースとなるLongcheer Yacht Clubは、今、急ピッチで建設が進んでいて、ポンツーンの一部は突貫工事で間に合わせたような感じでしたが、マリーナの中は広々とした芝生やビーチ、レストランなどがあり、施設も大変立派です。周囲はまだあちこちが大規模に造成中ですが、ホテルなども完成したら一大リゾートマリーナになりそうな様相です。
ドックアウトするTeam HMYCです。photo by CCIR
初日は出鼻をくじかれましたが、2日目はインショアの上下レースを2本と、島廻りレース1本がおこなわれました。この日は、朝起きると「ウソでしょ?」というくらい強い風が吹き荒れていて、まるで台風。それでも普通にレースはおこなわれるようなので、安全第一!と言いつつ、かなり心ざわつかせながらのドックアウトとなりました。結局レースがスタートする頃には、MAX20ノットほどの風に落ち着いてきました。しかし、強風下で慣れない大型艇でのレースに苦戦。午後の島廻りでも、白波が砕ける切り立った岩山をかすめながら、ジェネカーを揚げて団子で回航するなど、エキサイティングな展開でしたが、日頃一緒に乗る機会のないメンバーでの初めてのレースは難しく、なかなか思うようなレースが出来ませんでした。
2日目はイイ風が吹きました!photo by CCIR
この日の夜は市内のイベント会場で、深セン政府の要人なども出席する大変盛大なオープニング・セレモニーが開催されました。出場チームはそれぞれプラカードを持ったスタッフに続き、自国の小旗を振りながら一般市民もいる大きなスタジアムへと入場行進です。その後も手の込んだアトラクションや盛大なショーが続き、まるでオリンピックです!ヨットレースでこのような開会式が催されることは日本では全く想像できないので、この手の国際イベントへの力の入れようや中国のパワーにただただ驚きました。
3日目は一転して微風~軽風のコンディションになりました。この日は夕方まで海の上にいて長い一日となりましたが、上下を2レースしか消化できず、成績も振るわず。そして、あっという間に最終日を迎えることになりました。
最終日の朝は、最初は軽めながらも順風でした。今までなかなか納得行くレースができないHMYCですが、そろそろチームワークもイイ感じに出来上がってきた所なので、最終日、一矢報いるつもりで臨みました。しかしその思いもむなしく、ゼネリコを連発して最後にブラックフラッグがあがったスタートでケースに巻き込まれ、苦しい展開となってしまいました。風もどんどん弱くなり、結局1レースのみで終了となりました。
優勝は、2009年のチャンピオン「チーム・シェラトン」(南アフリカ)で、今年もタイトルを防衛しました。2007年アメリカズカップチャレンジ・ShosholozaのスキッパーMark Sadlerがヘルムスマンをつとめ、他にもFBの世界チャンピオンやオリンピックセーラーを擁したチームで、他とは一線を画したレベルだったように思います。2位は「ヨッティング・グローバル」(ニュージーランド)。クルーを補強して万全の準備でリベンジに挑みましたが、今年も「チーム・シェラトン」を打ち破ることができず、昨年同様の2位。3位はGoblin Alaturca(トルコ)。イスタンブールの40.7で活動するオリジナルチームで、過去レーザーワールドでの上位入賞経験を持つオーナーがスキッパーをつとめました。
ワンデザインの洗礼を受け、ホロ苦い結果に終わったTeamHMYC(左端)です
photo by CCIR
過去参加した日本チームは、今まで好成績をおさめていたようですが、今回のHMYCのチャレンジは28位という少々ホロ苦い結果で終わりました。そして、慣れないワンデザイン・ビッグフリートの洗礼を受けて帰ってきました。40ftの大型艇が30艇も集まってのワンデザインレースは、日本では経験することができません。スタートでわずかにスピードが足りなかったり、ほんの1/4艇身バウが引っ込んだだけで、当然ながらあっという間に不利な展開となり、また、どこをどう走っても必ず何艇かと絡みがあるので、その辺りがまさに経験不足でした。ただ、周りのチームは近年プロセーラーなども多く乗るようになったようなので、普段HMYCでクラブレース主体に活動するサンデーセーラーのわたしたちにとっては、チャレンジし甲斐のあるレガッタで、すばらしい経験を積むことができました。
今回、中国との外交問題が取りざたされている中での遠征となったため、日の丸を掲げても大丈夫か、市民からバッシングは受けないかなど、心の隅に多少の心配を抱えての参加となりましたが、日本のヨットクラブからの初参加ということで、予想に反して現地では歓待を受けました。そして最後の表彰式では、なんと、フレンドシップの証にとHMYCに「特別参加賞」が授与されました。これは、昨今の日中情勢を考慮しての計らいではないかと思うと、今回わたしたちはヨットレースというスポーツを通じて、中国をはじめとする他国のセーラーたちととても有意義な民間交流ができたのではないかと思います。
応援いただいた皆様、どうもありがとうございました。